夫が帰宅してすぐに300円を出せという。
新手のカツアゲか?と思いつつ理由を聞くと、「プリキュア新聞」を買うのだという。
アラフォーのおっさん、プリキュアを買うのか。人間変われば変わるもんだと感心する。
長女は妊娠9ヶ月まで性別が「男の子」と言われていた。
里帰り先の病院で、「性別聞いてる?はっきりわかるよ~♪」と先生に言われ、「はぁ~い。男の子って聞いてます!」と答えた時の先生の仰天ぶりは記憶に新しい。
「おおおお女だよ!!お・・女の子だよ!私には女に見えるよ!」と言われた時の衝撃も忘れることはできないすごいものがあった。
考え抜いた名前、おじいちゃんから一字もらった選び抜かれた名前、字画バッチリ大吉の最高の名前、それと水色の初着・・・これらが無駄になるのか。
そう考えるとエコーでヌルヌルのでかいお腹丸出しで「えぇ~~・・・。えぇ~・・・?」としか言えなかった。
ずっと逆子だった為、へその緒が男の子のシンボルの位置に来ていたようで見間違いが起こったようだ。
その夜、電話で性転換報告を受けた夫。
「サッカーは?一緒にサッカーしようと思ったのに。仮面ライダーとか、ドラゴンボールとか色々みたかったのに。女なんか、キャンディーキャンディーやん。」
キャンディーキャンディー・・・。夫、古すぎる。私の時代は姫ちゃんのリボンとかセーラームーンとか白鳥麗子とかだったよ。
男の子が欲しかった夫はしばらくは男の子を諦めきれなかったのだろう。
長女が生まれてしばらくはキャラクター物はダメ!ディズニーもヤダ!と、女の子らしいものにアレルギー反応を出していた。
ところが、次女が生まれて我が家の女子率が高くなるともう夫の好みなんて反映されるわけがない。
家の中はジュエルペットやマイメロディ、プリキュアで埋め尽くされてしまったのだ。
家がイゴゴチ悪くなってしまった夫は、ついに諦めたのか去年あたりから娘のご機嫌を取ろうと必死にプリキュアを見だしたのだ!!
キャンディがどうの、キュアハッピーがどうの、キュアサニーだのキュアマーチ、キュアビューティーとドンドン出てくるキャラクターに圧倒されつつも一つ一つ覚えようと努力する夫。
「そんなもん、キュアだけ付けときゃなんでもプリキュアやん。キュアバナナとかいそうやん。キュアみかんとかさ。」
そういっていじめる私に見向きもせず、着実にプリキュアを吸収し続け、ついに「お父さん、プリキュア知ってるね~♪」のお褒めのお言葉を長女から頂いた夫。
ここで一気にお父さんの株を上げようとプリキュア新聞の購入を決意したのだ。
次の日、鼻息荒くプリキュア新聞を持ってきて娘二人にドヤ顔で見せた夫。
さぞかし喜ぶだろうと期待に胸を膨らませながら待った娘の反応は
「字・・・漢字ばっかで読めない。」
「知らないプリキュアがいる。」
「ぬり絵だけちょうだい。」というシンプルなもの。
何でだ?何故こんなに反応が薄いのだ?
動揺する夫が持っている新聞をよく見ると
「お父さんお母さんのためのプリキュア新聞」の文字。
夫よ。あんたは勘違いをしているよ。これは子どもが喜ぶ新聞ではなく親や、祖父母が子どもと話をあわせる為にプリキュアを勉強する為の新聞だよ。
確かに、中身はとても濃い。歴代のプリキュアのあらすじは勿論、キャラクターの名前や声優さんのインタビュー、映画の苦労話など読みごたえは十分だし、大人はかなり楽しめる。
ただ、子どもが自分で読むものとして作られていないのだ。
私の説明でようやく事実に気付いた夫。全24面をじっくり読み進め、今では歴代のプリキュアの名前を言えるようになっている。
あのキャラクターアレルギーの夫がこんなになるなんて。プリキュア新聞!恐るべし!である。